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2019年10月10日木曜日

翻訳者になりたい人の夢を食い物にする商法

Facebookには、プロの通訳者と翻訳者のコミュニティーがあります。

最近、一部の翻訳者養成講座のやり方に関し、皆があきれ、驚きました。

講座の謳い文句は、
「短期間で翻訳家としてプロデビューできる」
「年収〇千万稼げる」
というものです。かなり無理があると思いませんか?

これから翻訳を始めようとする人は実績がゼロであり、応募できる翻訳会社が限られますが、実績を詐称するように講座が指導しているそうです。

さらに、講座の受講者は翻訳会社のトライアルの問題を共有し、集団カンニングを行っているそうです。

受講料は高額です。(一説では40万円。)

この講座では、「翻訳会社のトライアル合格=プロデビュー」ということになっています。しかし実際には、たとえトライアルに受かっても翻訳会社に登録されるだけで、仕事が回ってくるかどうかは別の話です。

日本翻訳連盟は、こうした講座に関し、法人会員の翻訳会社に警告を出したので、実績を詐称してもバレるようです。そうなると受講生は、いったい何のために大枚をはたいたのか分からなくなりますよね。

これから翻訳者を目指す人は、てっとり早い道はないものとあきらめ、下記のような信頼できる情報源を頼って道を探りましょう。

通訳翻訳ジャーナル
日本翻訳者協会(JAT)
日本翻訳連盟(JTF)

ちなみにJATの翻訳コンテストは、会員でなくとも無料で挑戦でき、1位~3位の受賞者はプロによる評価が無料でもらえます。

どうやって翻訳者になったか」というツイッターのまとめもありました。

翻訳者の営業の仕方などが分かるので、下記の本がおススメです。
Add

Chris Durban著、「The Prosperous Translator: Advice from Fire Ant & Worker Bee」


翻訳者として実力をつけたければ、とにかく専門分野の日本語と英語を読みまくるしかないと私は思います。

私が若かった遠い昔、翻訳者になるには10年かかると言われました。今はどうか知りませんが、英語に触れる方法はいくらでもあるので、もっと早いと推測されます。人脈が必要ならば、JATでボランティアをしたり(いつでもボランティアを募集していますので)、JTFの会合に行ってみてはどうでしょうか。

おもしろかったらクリックしてね♪

2019年10月8日火曜日

誤訳のリスクはどうする?

日本翻訳者協会で聞いた話ですが、ある医療翻訳者が薬の量について誤訳したため、患者が死亡したという事故があったそうです。これは誤訳のこわさを物語る極端な例で、ここまで深刻な話は他に聞いたことがありませんが、人間は神様でないので、どんな翻訳者でも間違うリスクはあるはず。それでは、誤訳のリスクにどう対処すればいいのでしょうか?

一般論として、リスク対策には「回避」、「緩和」、「転化」がありますので、これに沿って翻訳者と翻訳ユーザー(翻訳を発注するお客様)の両方の目線から考えていきたいと思います。


1.回避(そもそも誤訳をしない方法。)
翻訳者がとれる対策
  1. 何が危ない誤訳なのか判断できるだけの業界知識を持つ。どの業界にも法規制や実務慣行や科学的な常識があると思いますので、何年かかけて知識を吸収しましょう。ちなみに私の専門とするオルタナティブ投資の業界でも「やっていけないこと」がたくさんあり、資格試験を勉強する中でたたきこまれました。
  2. 自分が知らない分野は引き受けない。翻訳会社や顧客は、どんな分野でも仕事を振ってくるものです。自分の専門をはっきり伝えましょう。

ユーザーがとれる対策
  • 信頼できそうな翻訳者を探しましょう。


2.緩和(たとえ誤訳があっても、責任や被害を限定する。)
翻訳者がとれる対策
  • 受注する条件として、「翻訳の重大な瑕疵から生じた損害の賠償は、翻訳料金を上限とする」と決めましょう。
  • 良い参考例は、ATA(American Translators Association)の契約書のひな型で、自由にダウンロードできます。https://www.atanet.org/business_practices/translation_agreement_guide.pdf
  •  発注者と翻訳会社の中には、無制限の賠償責任を翻訳者に求めるところもありますが、これは危険なので避けましょう。私自身もそのような発注者と遭遇したことがありますが、交渉して条件を変えてもらいました。
  •  ちなみに、「賠償責任」以外の部分に関しては、日本翻訳連盟のひな型がよい参考になります。https://www.jtf.jp/jp/useful/report_bk/contract.html

ユーザーがとれる対策
  • 訳文を一字一句チェックするのは大変なので、業務に通じている担当者が内容の肝心なところだけチェックすることをお勧めします。


3.転化(たとえ誤訳があっても、自分が責任を負わない方法。)

翻訳者がとれる対策
  • 残念ながら、ありません。

ユーザーがとれる対策
年収1千万円を超える翻訳者は滅多にいないため、誤訳によってあなたの企業が損害を被っても、賠償する財力が翻訳者に無い可能性が高いです。
一般に、第三者に企業が情報を提供する際、以下のような例をよく見ます。これが対策になると思います。
  • 読み手の自己責任で情報を使用してもらう旨の文言を添える。
  • 特に英文契約書で、和訳はあくまで「参考」と位置づけ、法的な効力があるのは原文とする旨を謳う。
  • そもそも「原文自体の正確性を補償しない」と注釈を入れる。
  • さらに「原文に基づいて行動した結果被った損害を補償しない」と注釈を入れる。


2019年8月31日土曜日

肩こりと翻訳と水泳

肩凝りに悩む翻訳者は多いようです。

解決策として、人間工学に基づいて設計された高価なイスを買ったり、スタンディング・デスクを買うか自分で作るかしたりする翻訳者が多いです。

私の場合、バランス・ボールを椅子にして、チェック作業のときは立つようにして、最低週3回はジムで泳ぐという方法をとっています。





泳ぐ間は仕事のことを考えずに無心になれるので、良い気分転換です。ある知合いの翻訳者は1時間ずっと泳ぎっぱなしだそうで、何メートル泳ぐというような距離の目標は決めず、1時間したら終わりにすると言っていました。

私の場合、最初は50メートル泳ぐだけで息切れしていたものの、だんだん距離が伸びてきました。それでも1時間泳ぐ体力はありません。

そもそも目標が「魚のように泳ぐ」ことで、クロールを優雅に泳ぐ技術を下記のDVDで学びました。

美しいクロール 解体新書
このDVDはアマゾンで買えます。


このDVDは優れもので、運動オンチの私でさえ1年半の練習で1キロを30分で心拍数120(つまり楽に)で泳げるようになりました。見ず知らずの人に「速くてきれいに泳ぐ」とほめてもらうこともあります。

しかし他人より速く泳ごうと競争心を出したり、自慢するために泳いだりすると、楽しくなくなってしまうので、自分が楽しめるペースをキープすることにしています。

1キロということは1往復50メートルを20往復ですが、何往復したのか途中で忘れてしまいます。そこで100円ショップで髪を束ねるためのプラスチックのリングを大小2種類買い、小さいリングは指にはめて1往復するごとにずらし、親指以外の全部の指を移動したら大きいリングを左の手首から右の手首にはめかえる、とすると忘れないで済みます。

気がつくと、いつのまにか肩こりに縁のない生活になっているのでした。


2019年8月30日金曜日

翻訳者が業界団体に顔を出すということ

ある翻訳者の集まり。楽しかったけれど…。
翻訳者の集まりに行くのは楽しいです。気が合うし、話が合うし、たまに仕事を紹介してもらうこともあります。しかし1つ問題が。。。紹介してもらう仕事が自分の専門と一致する可能性がゼロに近いことです。なぜなら、参加者は特許、医薬、法律、映画字幕、ゲーム、機械、日本文化などを専門としており、私が専門とする「オルタナティブ投資」の意味を知っている人など、まずいません。


そこで、オルタナティブ投資の業界の交流会に出向くことにしました。こちらの参加者は、金融業界でファンドを運用しているプロの方々です。

ものすごく緊張します。場ちがいではないかと気おくれするし、隣の人と何を話したらよいか分かりません。女性も少ないので、ますます居心地が悪いです。

この不快感を我慢し、セミナーや交流会に何度か出てみましたが、「なんでアナタがここにいるの?」みたいな意地悪なことを言ってくる人は一人もいませんでした。

それどころか私が翻訳をやっていると告げると、「通訳ってすごいといつも思います」と気を使ってほめてくれる女性のファンド運用者すらいました。(翻訳と通訳は全然違うのですが、まあそれはそれとして。)

金融業界にはバイリンガルに近い人が多くいるので、そもそも翻訳のニーズがないのではないかと不安でした。

しかし私は知ってしまったのです。金融関連の翻訳をいくつか目にしましたが、ことオルタナティブ投資がテーマになると、誤訳・珍訳のなんと多いことか。これにお金を払っている人がいるということは、私の出番があるはずなのです。

そこで業界の集まりに出て、自分の顔を覚えてもらうことが肝要かと思っています。隣の人と何かを話せばいいのか、いまだに分かりませんが、自分から何か話すと言うよりは、お酒をお食事を楽しみながら相手の話を聞くだけでもいいかと思ってます。

インターネットとスマホの時代でも「人と人が会う」ということは、すごいことだと思います。会ったからと言って即、お互いに気があったり信用しあえるとは限りませんが、フリーランスの翻訳者は極力お客さんのいそうな場所に足を運んで、お客さんの世界を少しでも知るべきだと考えています。

2019年8月22日木曜日

英訳のおもしろさ



日本語を学習した英語ネイティブの人でも、「思う人は思うと思う」 という日本語の表現は理解できないらしいです。

あなたなら、以下をどう英訳しますか?
  • 思う人は思うと思う
  • 考える人は考えるものだと思う
  • 言いたい人は言うものだと言いたい
  • あるところにはある
  • ないところにはない
  • 知ってる人は知ってる
  • 知らない人は知らない
  • ダメなものはダメ
  • 良いものは良い

Googleの自動翻訳にかけると。。。

思う人は思うと思う
Think people think.

考える人は考えるものだと思う
I think people who think.

言いたい人は言うものだと言いたい
I want to say that the person I want to say is what I say.

あるところにはある
Somewhere.

ないところにはない
Not in nowhere.

知ってる人は知ってる
Who knows knows.

知らない人は知らない
I don't know people I don't know.

ダメなものはダメ
Useless things are useless.

良いものは良い
Good things are good.

。。。と、まったく文章を成していなかったり、何を言いたいのか分からなかったりで、最後の2つはかろうじて文章になっていますが、英語は繰り返しを嫌うので、良い文章とはいえませんよね。


日本語に独特の表現は、行間を読むことがポイントになります。実務翻訳ではこれほどクセのある表現は出てきませんが、面白いので英訳してみました。

思う人は思うと思う
I suppose such thoughts are shared among certain people.

考える人は考えるものだと思う
I guess some people are predisposed to think.

言いたい人は言うものだと言いたい
I would say you can't stop people from talking.

あるところにはある
We have them in certain locations.

ないところにはない
If they don't have it, there is nothing you can do about it.
or
If they don't have it, that's it.

知ってる人は知ってる
It depends on whether you are one of those in the know.

知らない人は知らない
It is not generally known.

ダメなものはダメ
This is not good no matter what.

良いものは良い
There is no dispute that some things have inherent qualities that are good.

驚いた話ですが、「ひとつの単語を別言語のひとつの単語に必ず対応させるべし」という指示をチェッカーや翻訳者に出している翻訳会社があるそうです。どうしてそれができるのか不思議です。

英訳は、行間を読むところが難しくもあり、翻訳者としての醍醐味を感じさせるところでもあります。


2019年7月28日日曜日

翻訳文のチェックで悩まないために

さて、外部の業者から翻訳文を受け取ったら、どうやって社内でチェックをすればいいのでしょうか?

翻訳されたものは購入者の所有物ですから、ご自由に加筆修正していただいて結構ですし、自社の営業方針に合わせて編集する必要もあるかと思います。
 
以下では、訳文の精度のチェックという観点で、Brian Mossop著「Revising and Editing for Translators」に基づいた「チェックの原則」をご紹介いたします。

同書は、日本翻訳者協会の理事長であるトニー・アトキンソンさんが推薦してくれた本です。著者はカナダ政府の翻訳局で40年にわたって翻訳を行ない、翻訳のチェックと指導にも従事したベテランです。


               ★ ★ ★ ★ ★ ★ ★ ★ ★

 

○ あなたの求める翻訳レベルは?


翻訳の質、すなわち正確性と文章の質は、以下の4つのレベルに分けられます。
  1. かろうじて理解可能なレベル(Intelligible)ー 元の文章の大まかな内容を読み手がはなはだしく誤解するまでには至らないレベル。
  2. 内輪向けレベル(Informative)ー 読むに堪える文章で、意味がかなりはっきり伝わる。社内で小数の社員が情報を共有することを目的とし、読んだ後にお役御免となる文章に向く。
  3. 外部発信用レベル(Publishable)ー 文句なしに正確で、明瞭で、業界向けの表現を使っており、読みやすい。長期間にわたって社外の多くの人々が読む可能性のある文章に向く。
  4. 匠のレベル(Polished)ー このレベルになると、内容とはまったく関係なく、読むという体験自体が快感をもたらす。このように磨き抜かれた文章を書くには多大な時間を費やす必要がある。文章のひとつひとつが完璧になるまで何度でも書き直す。
チェックが必要なのは3と4でしょう。

 

○ 何をチェックすべきか?


翻訳のチェックとは、まずは大きな間違いを見つけることです。

例 ― 訳抜け/はなはだしい誤訳/あまりにも翻訳調なところ/専門用語の間違った使用/誤字脱字/ページの割り振りの間違い。

お金を出して訳してもらったものに大きな間違いがあるはずがないと思うかも知れませんが、最近はインターネットの普及で参入障壁が低くなったことにより、翻訳業者も玉石混淆となり、「え?!」と驚く品質のものも散見するようになりました。

さて、大きな間違いがなかったとして、次に欲をいえば、文章のスタイルを直したり、やや翻訳調っぽい部分を取り除いたり、原文にもっと忠実になるように少々手を加えることも可能です。

しかしながら、人にはそれぞれ好みがあり、他人の文章をチェックする場合、たとえ良い翻訳文であっても、「自分がやったらこうなる」という翻訳文に変えたくなるのが人情…。

時間は無限にないので、バランス感覚が必要です。

 

○ お勧めのチェック原則4選

  1. 「ん?」と2回読まないと意味が分からない文章、原文を参照しないと意味が分からない文章は、修正が絶対に必要です。
  2. 文章を全面的に書き直すのではなく、小さな変更にとどめましょう。
  3. 迷った時は、書き換えるのを止めましょう。新たな間違いを生まないために。
  4. 根拠を説明できない書き換えは止めましょう。

○ べからず集6選

  1. なんとなくこの部分はもっと良くなるような気がする…。(そうかもしれませんが、必要性はありますか?)
  2. 同じことを違うふうにも言えるけど、どっちがいいだろう…。(どちらが良いかを決める必要はありますか?)
  3. せっかくチェックしてるんだから、何か変えなくては…。(いいえ、その必要はありません。)
  4. この方がカッコいいから…。(「カッコいいから」は、さしたる根拠になりません。)
  5. 自分だったらこう訳すから…。(あなたの担当は翻訳ではありません。)
  6. もっといい翻訳を思いついたから…。(その翻訳を改善する必要はありますか?それとも、今のままで十分ですか?)

 

○ チェックは誰が、どこまでやる?


理想的には、翻訳者と同等のスキルを持つ別の翻訳者が原文と突き合わせればいいのですが、これでは翻訳に要する時間と費用が2倍かかってしまいます。

したがって現実的な対応として、あなたの会社でその分野に詳しそうな方が訳文のみに目を通すことをお勧めします。

実際、欧州経済協力機構(OECD)の翻訳方針においても、信頼できる翻訳者を使っている場合、チェックは重要でも必須でもなく、やらないよりやった方がいい、という程度で、チェックする場合は訳文だけを読む形を推奨しています。

訳文を読んでみて、文のつながりが悪いとか、論理の展開がおかしいとか、翻訳が怪しそうならば、その部分だけ原文と比較するのです。

もっとも、この方法だと訳抜けや誤訳を見落とすというリスクはあります。たとえ訳文がスラスラ読めても、実は原文の内容の一部がごそっと抜けているかも知れません。また、訳文を読んで「なるほど」と思えても、原文と意味が違うかも知れません。

そこで、もう1つの方法として、ランダム・チェックがあります。

タイトルと最初の段落を原文と比較し、それ以降はランダムに段落を選んで原文と比較するやり方です。(例えば、各ページの最初の段落だけチェックするとか。)

なぜタイトルと最初の段落が必須かというと、そこに誤字脱字があると印象がすごく悪くなるからです。

カナダ政府の場合、400ワード分の翻訳箇所を文書の量に応じて1~3箇所抜き取ってチェックしたそうです。

最後に、社内チェックを全くしない、という選択肢もありえるでしょう。


50代でもCAIAは受かる

私のような翻訳者がこの資格を取った理由は、オルタナティブ投資に関して翻訳する際、情報が少なくて困ったためです。市販の書籍を読んでも、インターネットで検索しても、分からないことだらけです。

CAIAの勉強によって、ばらばらの知識を体系化でき、翻訳上の疑問も解消するのではないかと思いました。

勉強の方法


試験は2段階あり、レベル1とレベル2の試験が半年ごとにあります。

CFAの保有者は、レベル1を受けなくてもレベル2に進めるという制度が始まりました。

またレベル2の職業倫理の部分はCFAと重複しているため、CFA保有者にとって有利です。

公式な教材として、CAIAの教科書(有料)と模擬試験(無料)があります。

これだけで受かるすごい人もいるようですが、多くの人は、UpperMark もしくは Schweserという受験教材会社のコースで勉強します。私も教材会社のお世話になりました。

UpperMark と Schweserでどちらにするか迷ったあげく、UpperMarkにしました。

受験生の交流サイトであるAnalystForumによれば、UpperMarkは実際の試験よりもやや難しく、Schweserは説明が読みやすいという評判でした。(実際の試験でも、UpperMarkをやったおかげで、問題がやさしく感じました。)

UpperMarkの教材には数式のリストがついていて、覚えるべき数式の範囲がわかるので便利でした。

数式のあまりの多さに頭がクラクラしますが、よく見ると似たような式も多く、お経のように繰り返すとなんとか頭に入るものです。

クイズ形式の模擬試験もあり、最初は悲惨な結果でも、徐々に8割程度は答えられるようになりました。

フラッシュ・カードも買いましたが、ほとんど使いませんでした。

法律や各投資対象の特性など、暗記すべき内容が多くありました。

ICレコーダーに自分の声でポイントを録音し、お皿を洗いながら、洗濯物を干しながら、道を歩きながら聞いて暗記しました。

50代で新しいことが覚えられるのか?


心が折れそうなときは「還暦三度目の京都大学合格記」を読むことをお勧めします。

一説によると、短期記憶は齢とともに衰えやすいものの、長期記憶はそれほどでもないそうです。

したがって繰り返し脳にインプットする長期記憶ならできるはずです。

今さら数学ができるのか?


私のような翻訳者は文字列ばかり見て仕事していますので、数学は過去数十年まったく触れていません。

九々ですら忘れていた状態でした。

しかしCAIAの数学は、数式の意味の理解と応用ができればよく、微積分の複雑な計算や証明を求められることはありません。

しかも点数の配分は全体の2~3割なので、文章問題で挽回することもできます。

日本人に英語のエッセイが書けるのか?


仕事がら、さすがに英語には日々触れていますが、それでもネイティブではなく、特に冠詞の判断は困難です。

しかしCAIAは英語の文法の間違いが採点の対象にならないので、大丈夫です。

キーワードを書ければ突破できると思います。

合格して分かったこと


結局、CAIAで勉強した内容は、翻訳に大いに役立っております。

さらに、CAIAの日本支部が最近立ち上がったため、オルタナティブ投資のプロの方々とお会いでき、中には翻訳を発注してくれる方もいて、私にとってこの資格は有益な時間とお金の投資となりました。



オルタナティブ投資という言葉を初めて聞く方へのざっくりしたイメージ

「投資」というと、何が思い浮かびますか?

ぶつうは株や債券を買って、そのまま持っていることですよね。


オルタナティブ投資というのは、ざっくり言って、そうでない全ての投資のことをいいます。

そもそも投資は、払ったよりも多くのお金が戻ってくれば、何でもよいのです。


金の卵を産む金のガチョウでもいいのです。



そしてオルタナティブ資産という金のガチョウには魅力があります。


まず、株や債券をふつうに持っているよりも儲かることがあります。


さらに、金のガチョウの相場は、株や債券と違った動きをしたりします。証券市場がどっと落ち込んだとき、逆に儲かったりすれば、うれしいですよね。


金のガチョウが欲しくなりませんか? でも、それはどこで買えるのでしょうか?ガチョウの世話はどうするのでしょうか?


このあたりが難しいので、オルタナティブ投資はシロウトには手が出せないのです。

また一度に投資する金額が大きいので、よほどの大金持ちか機関投資家でないとムリです。

手塩にかける



オルタナティブ投資と言えば、ベンチャー・キャピタルやバイアウトが代表的でしょう。


ベンチャー・キャピタルとは、例えて言えば、ガチョウのヒナを買って育て、卵を産めるようになったらガチョウを売って儲ける仕事です。


(みなさまご存知のアップル、フェースブック、グーグル、スターバックスは、ベンチャー・キャピタルのおかげで大きくなりました。)


バイアウトとは、弱ったガチョウを手当てしてあげて、卵をバンバン産めるようになったらガチョウを売って儲ける仕事です。


どちらも世話をしなければなりません。

面倒くさいですよね。


さらに金の卵を産むまでに、何年も何年も待たなければなりません。

不便ですよね。

普通の株と債券だったら、いつでも電話やネットで買ったり売ったりできるのに。


この面倒くささと不便さの見返りとして儲けが大きくなければ、悲しいですよね。


その点、年金、保険会社、大金持ちは、面倒を見てくれる人を雇う財力があり、すぐに儲けが出なくても困らないので、長く待ち続けることができます。


さて、他にも、いろいろなオルタナティブ投資があるので、びっくりします。


音楽や映画のロイヤルティー、薬の特許、保険、森林、農地、飛行機、港や空港や高速道路(要するにインフラ)、証券化した債権(学生ローン、カードローン、医療債権)などなど。


ヘッジ・ファンド、不動産、商品先物はすでにご存知ですよね。


投資する側とされる側のおもしろい関係


オルタナティブ投資の醍醐味は、それだけではありません。

投資家と運用会社の関係がおもしろいのです。

お金を出す方がエラい、というわけでもないのです。

人気のある運用会社は、投資家を選ぶことができます。


行列のできるラーメン屋というか、「一見さんお断り」の世界ですね。

投資家と運用会社の関係は何年も続くので、まるで結婚相手のようにお互いをしっかりチェックします。



そのマッチメーキングはあまり公表されません。


プレースメント・エージェントという、いわば仲人が良いお相手を探してくれたりします。

秘密めいていてワクワクしませんか?


オルタナティブの投資家は、一度に大金を投じるので、運用会社にモノを言いやすくなります。


「環境に優しく、女性を平等に扱い、裏で会計を不正操作しない企業にもっと投資しなさい」と言うことができます。


私は投資といえば金儲けに始まり、金儲けに終わるものかと思っていましたが、昨今は世の中を明るくする方向に進んでいるようです。


うれしくないですか?


2019年6月1日土曜日

TOEICは370点でもだいじょうぶ

きのうは中学の同窓生4人で飲み会をしました。中学校は仙台にありますが、勤め先の本社が東京にあるため、東京に住んでいたり出張に来たりする仙台出身者は多いです。

建築現場の英語

A君は大手ゼネコンに務めており、東南アジアや中近東で橋を作ったそうです。現地の作業員はフィリピン人やトルコ人で、英語で指示しなければなりません。

彼曰く「英語が本当にできる人は、現場に1人いればいいんだよ。その人は契約書なんかのドキュメントをやる。おれたちが作業するとき、コミュニケーションは、気合い・技術力・英語力のうち、2つがあればいいんだ。おれのTOEICなんか、370だよ。」

なるほどです。


説明しずらい翻訳の世界

「たしか加藤さん(私の旧姓)は通訳やってるんだよね。」と聞かれました。「いえ、翻訳です。」みんなにとって通訳も翻訳も似たようなものなのでしょう。

「どんな翻訳をやっているの?」オルタナティブ投資と説明しても誰も知らないだろうし、詳しく説明するとせっかくの酔いがさめそうなので、「金融の翻訳しています」と言いました。「いま何が一番もうかるの?」とすかさず質問されます。「いまは低金利だから投資はむずかしいよ」と言うと、つまらなそうな顔をされました。ETFは手数料が低いよ、ぐらい言えばよかったと思います。

「翻訳は1千万円ぐらい稼げるの?」

「人によります」と答えておきました。ちなみに私の年収は1千万にはとどきません。しかし日本翻訳者協会の集まりに行くと、1千万プレーヤーはちらほらいます。


男と女でどちらが大変か

酔いが回ってくると、A君とB君は、男性がいかに仕事で苦労しているか、という話をしだしました。妻と子供の生活を守るため、いかに粉骨砕身しているか。出世すると責任が重くなって体をこわす人がいるけど、そうはなりたくない、と。私の夫も昔は残業して夜10時に帰ってきたものです。

上野千鶴子名誉教授が東大の入学式の祝辞で「女性は頑張れば頑張るほど壁が高くなる」と述べ、テレビや新聞で話題になりました。男性と女性では世界観に大きなギャップがあるようです。男女の両方が「犠牲になっているのは自分たちの側である」と主張している気がします。

ESG投資は、企業による女性の活用度を重視します。これによって男性の負担が減れば何よりです。男性がもっと家事をしてくれることもポイントですが。ちなみに私の夫は、負担の低い職場に移ってから、ときどき食事を作ってくれるようになりました。


2019年5月23日木曜日

翻訳者と原文との間にある「共感」

 ある英語の本が2人の別々の翻訳家によって訳され、日本語で出版されていました。「引寄せの法則」に関する本です。2つを読み比べると、原文が同じと思えないほど違う出来栄えでした。

 片方は自然に伝わる、しっくりくる翻訳でした。実は、それを訳した人は、翻訳に全く関係ない職種の会社員で、ある日たまたま本屋で原書を手に取り、あまりにも面白かったので訳したそうです。

 もう片方は残念な和訳で、直訳っぽく、いかにも「仕事だから、しょうがなくやった」感が行間に滲んでいました。

 この差がどこから来るのか考えてみると、翻訳者と原文との間に「共感」のようなものがあるかどうかではないかと私は思うのです。翻訳者と原文との間に何か有機的なつながりがあるときにだけ、生きた表現が生まれるようです。文章は人の心を変えることができるので、これは大切なことだと思います。
 日本翻訳者協会のミーティングに行くと、サッカー好きの人はサッカーに関する翻訳をしているし、映画好きの人は字幕翻訳をしており、それが自然な形かと思います。 

2019年4月28日日曜日

How do you translate “その他有価証券”?

Under the Japanese accounting standards, securities are classified into the following four categories:
  1. 売買目的有価証券: held-for-trading security
  2. 満期保有目的の債券: held-to-maturity security
  3. 子会社株式及び関連会社株式: subsidiary/affiliate stock
  4. その他有価証券: available-for-sale securities
The last category, その他有価証券, is meant to be held for a long-term.

What are 洗替方 and 切放法 ?

洗替方 (Araigae method) is an accounting procedure in Japan, which is probably unique in the world.  Under Araigae method, an asset is stated at the fair value on the balance sheet at the end of the period.  At the beginning of the next period, however, the book value is reversed to the acquisition cost.

Araigae method can be probably translated into “reversal method” in English.
切放法 (Kirihanashi method) is the lower of cost or market method.  Here, the carrying values of an asset at the end of the period and at the beginning of the next period are the same.

「unearned revenue/income」、「advance」、「前受収益」、「前受金」をどう区別するか?

「Dictionary of Accounting Terms (Barron's Business Guides)」によると、「unearned revenue」とは、商品や役務が提供される前に受け取られた対価であり、例えば顧問弁護士の月額料金など。

しかし同じ辞書で「advance」を引くと、これもまた商品や役務が提供される前に受け取られた対価で、例えば受注工事、公共料金、顧問弁護士の月額料金など、とある。

「顧問弁護士の月額料金」が「unearned revenue」と「advance」の両方に含まれていることに気づく。会計士はどちらの勘定科目を使えばいいのだろうか。


インターネットで検索した結果、「unearned revenue (もしくはincome)」は「advance」を含んでいるようにも受け取られ、どちらかといえば「unearned revenue」は継続的な役務の提供に使われ(家賃や保険料など)、その一方で「advance」は顧客による「手付金」のような感じである。

日本語で対応するのは「前受収益」と「前受金」だろう。

前者の「前受収益」は、継続的な役務を提供する契約の下で、いまだ提供していない役務に対し支払を受けた対価のことで、前受家賃、前受保険料など。

後者の「前受金」は、主たる営業取引において、商品や製品の引渡し又は役務の提供完了前に、契約を確実にするために、代金の一部を前受けしたものであり、例えば受注工事など。

日本語での区別は明確で、前受収益は継続的サービスだが前受金は継続的サービスではない。

翻訳する場合、ニュアンスが近いのは「unearned income」 = 「前受収益」; 「advance」 = 「前受金」だろうか。



翻訳の品質はどうやって分かるのか?

ある交流会で「翻訳の品質はどうやって分かるんですか?」と聞かれ、答えに詰まりました。

学歴、資格、経歴は、ある程度の目安になりますが、翻訳の実力を保証するものではありません。

その後あれこれ考えたのですが、結論としては「見れば分かる」しかないと、私は思っています。

さて、翻訳の良し悪しは、最初の一行で分かることが多いものです。
日本翻訳者協会(JAT)の新人翻訳者コンテストの応募者の提出物を見ても、最初からうまく訳せているものは、全体的に出来が良かったのです。

NHKの「のど自慢」に似ています。
出だしの歌声を聞けば、その人の力量がすぐに分かる気がしませんか。

ただし利き酒と同じで、「分かる人には分かる」ということなので、全く分からない人には説明のしようがありません。

センスの問題なので感じてもらうしかないのです。