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2025年3月27日木曜日

パワーポイントの翻訳


最近、パワーポイントを使った大きな翻訳案件を終えましたが、自分の進め方に問題があったと反省しています。忘備録として、改善点をまとめます。

最も問題だったのは、翻訳とレイアウト調整をほぼ同時に進めたことでした。

今回の文書は、InDesignで作成され、PDFに変換された英文の和訳でした。顧客からは日本語版をワード形式で納品するよう求められましたが、図表のレイアウトが大きく崩れる(次のページにずれ込むなど)ため、日本語版をパワーポイントで納品することで同意してもらいました

この文書には特徴があり、見開き(左右のページが対になって1ページに収まる形式)で作成されているうえ、ボックス内に文章がぎっしり詰まっていました。このようなレイアウトを扱うのは初めての経験でした。

顧客からは、できるだけ早く納品してほしいと言われていました。作業の効率化を図るため、パワーポイントに訳文を直接上書きする方法を選びましたが、これが問題でした表示を拡大するたびに見ている場所の位置がずれたり、画面が揺れたのです。さらに、文字同士や図表と文字が重なることもありレイアウト調整に気を取られ、翻訳に集中できないうえ、眼精疲労も悪化しました。

何とか納品しましたが、もっと良い訳ができたのではないかという思いが残り、タイポも発生してしまいました

この反省を踏まえ、次回からは以下の手順で進めたいと考えています。


今後の進め方

  1. 文章部分の見積もりはワードで行う

    • 顧客からPDFの原稿を受け取ったら、パワーポイントに変換し、ボックス内の文字をワードに貼り付ける。

    • ただし、小さなボックスは手間がかかるため、見積もり時には無視する。

    • この作業は面倒だが、料金と所要時間を正確に見積もるために役立つ。(PDFからワードに一括変換してからワードの文字カウント機能を使ったところ、ボックス内の文字が正しくカウントされていないことに気づいた。)

  2. 翻訳は基本ワードで行う

    • 訳文の入力、原文との比較チェック、AI訳との比較をワード上でする。

    • 訳文を音読することで、自然な表現かどうかを耳で確認する

    • 図表の翻訳は並行してパワーポイントで作業する

  3. ワードで完成した文章をパワーポイントに流し込み、レイアウトを整える

    • 推奨書式:

      • フォント:Yu Gothic UI

      • 字間:標準

      • 行間:1.2

  4. 完成したパワーポイントをPDFに変換し、スムーズに読めるか確認する

    • 金融業界の人は忙しいため、素早く理解できるかが重要

    • 読みにくい箇所があれば修正する。

  5. A3用紙に印刷し、数字やタイポをマーカーでチェックする

    • 環境負荷はあるが、1つのタイポが大きな印象ダウンにつながるため、紙とマーカーペンを使った最終チェックをする


パワーポイントでの翻訳には特有のコツが必要なため、これを避ける翻訳者もいるようです。しかし、私は積極的に受けるようにしています。その理由は2つで、まず、もともと自分がグラフィックデザインに興味があり、ビジュアル表現が好きだから。そして、私の顧客(海外の運用会社など)は、日本市場向けの営業資料としてパワーポイントを使用することが多いためです。

今回の反省を踏まえ、次回はより効率的に進めたいと思います。

2025年2月11日火曜日

「流通利回り」は英語で何と言うのでしょうか?


 「流通利回り」は保険契約において登場することがあります。この意味についてオンラインで調べると、「流通市場で債券を購入し、満期まで保有した場合の利回り」と説明されているものをいくつか見つけました。


しかし、ここで疑問が生じました。それでは「最終利回り」と同じ意味ではないでしょうか?何が違うのか、もし同じ意味だとすれば、なぜ異なる呼び名が2つ存在するのでしょうか?


「最終利回り」の意味を調べると、「流通利回り」とほぼ同じ説明が出てきますが、「償還差損益を含む」という文言が追加されています。これが気になる点です。


かなりの時間を費やして調べ、確信を持てるわけではありませんが、以下のような結論に至りました。

意味自体は同じであるものの、何を強調したいかによって使い分けがされているようです。


つまり、「流通利回り」は「応募者利回り」と対比して使われるようです。債券を購入した市場が、前者が流通市場、後者が発行市場である点が異なります。


一方で、「最終利回り」は「所有期間利回り」と対比して使われるようです。保有期間が、前者が満期まで、後者が売却時までという点が異なります。


そのため、保険契約内では「流通利回り」を使用することで、「応募者利回り」ではないことを強調したいのではないかと考えられます。


さて、肝心の英訳ですが、私のおすすめは以下の通りです:

流通利回り → yield to maturity (YTM)

これに対する「応募者利回り」は、yield to maturity (YTM) at issue となります。


ちなみに、アルクのオンライン辞書では「流通利回り」を「distribution rate」や「distribution yield」と訳していますが、これらは違うように思います。


さらにChatGPTに聞いてみると、「流通利回り」=「直接利回り」と説明しており、これも違うと思います。