頭が疲れているときに翻訳作業をしてはいけない——これは、昨晩あらためて感じたことです。
クライアントの資料の中で、投資ファンドのパフォーマンスを四分位に分けてランク付けしている文書に出会いました。(四分位とは、データセットを25%ずつ4つに分ける手法です)。今回の文書では、上位のファンドが「1st quartile」に分類されていました。
さて、これを日本語でどう訳すべきでしょうか?
辞書によれば、あるいは統計学的に厳密に訳せば「第1四分位数」となります。これは正しい訳なのですが、日本語でこの言葉を見ると、「下位25%」という意味に受け取られてしまいかねません。
しかし、文脈を見ると筆者が言いたいのは「上位25%の好成績ファンド」なのです。
この場合、適切な訳は「上位25%」またはそれに準じる表現の方が明らかに誤解を防げるでしょう。
なぜこのようなことが起きるのでしょうか?
調べてみると、投資業界では「四分位ランク」が一般的に使われており、ランクの数字が小さいほど成績が良いというルールがあるようです。そう考えれば納得がいきます。
一方で、統計の一般的な使い方では「第1四分位数」はデータの下位25%を指してしまいます(下記の図をご参照ください)。
金融翻訳者は、こうした言葉の落とし穴に常に注意を払う必要があります。
正確に訳したつもりでも、意図の真逆になってしまうことがある——それが金融翻訳の奥深さでもあります。
疲れていると、つい深く考えずに言葉をそのまま置き換えてしまいがちです。しかし、プロの訳者はそれを避ける術を知っています。つまり、必要なときにはしっかり休むことが大切だということです。
[参考]
Explained: What is quartile ranking in mutual funds and how to analyse schemes using this ranking
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