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2025年6月20日金曜日

金融翻訳では、ときおり「逆」が正しいこともある


頭が疲れているときに翻訳作業をしてはいけない——これは、昨晩あらためて感じたことです。


クライアントの資料の中で、投資ファンドのパフォーマンスを四分位に分けてランク付けしている文書に出会いました。(四分位とは、データセットを25%ずつ4つに分ける手法です)。今回の文書では、上位のファンドが「1st quartile」に分類されていました。


さて、これを日本語でどう訳すべきでしょうか?


辞書によれば、あるいは統計学的に厳密に訳せば「第1四分位数」となります。これは正しい訳なのですが、日本語でこの言葉を見ると、「下位25%」という意味に受け取られてしまいかねません。


しかし、文脈を見ると筆者が言いたいのは「上位25%の好成績ファンド」なのです。

この場合、適切な訳は「上位25%」またはそれに準じる表現の方が明らかに誤解を防げるでしょう。


なぜこのようなことが起きるのでしょうか?

調べてみると、投資業界では「四分位ランク」が一般的に使われており、ランクの数字が小さいほど成績が良いというルールがあるようです。そう考えれば納得がいきます。


一方で、統計の一般的な使い方では「第1四分位数」はデータの下位25%を指してしまいます(下記の図をご参照ください)。



金融翻訳者は、こうした言葉の落とし穴に常に注意を払う必要があります。

正確に訳したつもりでも、意図の真逆になってしまうことがある——それが金融翻訳の奥深さでもあります。

疲れていると、つい深く考えずに言葉をそのまま置き換えてしまいがちです。しかし、プロの訳者はそれを避ける術を知っています。つまり、必要なときにはしっかり休むことが大切だということです。


[参考]

What is quartile ranking?

Explained: What is quartile ranking in mutual funds and how to analyse schemes using this ranking


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